今回は,骨組み計算ソフトを使った”小技”です。
グラウンドアンカーを互層地盤に定着せざるを得ない場合があります。仮設の山留めで,支持層となる洪積層が薄い砂礫,粘土の互層の場合などが典型的な例でしょう。
こんなとき指針等には取扱いに関して明確な規定がないため,それぞれ独自に処理しているのが実態ではないでしょうか。強度の高い方の層のみ期待する,あるいは単純に足し合わせる(・・・・),どちらも実際にそのような計算をしている人々を見たことがあります。
以下は,私が骨組み計算ソフトを利用して,こじつけた(?)一手法です。
(1) 地盤のN値などから地盤反力係数knを算出して,この値からせん断方向地盤反力係数ksを算出する。(一般的な値としてλ=1/3〜1/5)
(2) 定着部のグラウト+テンドンの剛性を梁要素としてモデル化し,これを(1)で求めたバネksで拘束する。
(3) 引張型アンカーの場合は梁手前から,圧縮型アンカーの場合は梁の奥から設計アンカー力を集中荷重として載荷する。
計算モデルは下図の通りです。
互層におけるアンカー力の分配
(4) 一般的なN値に対する周面摩擦力の値を上限として,バネ反力に応じてそれぞれの層が受け持つアンカー力を分配する。
実はやっていることは,地盤の剛性に応じて単純にアンカー力を分配しているだけなので,本当はバネ比(もっと言えばN値の比)が分かれば計算する必要もないほどです。こんな解析で実現象をシミュレートできるとは思っていませんが,一応数字で答えが出てくるので,設計根拠として説明用の資料などには使えると思います。
また,ちょっと考えれば簡単に分かることですが,結局アンカー力は地盤剛性の高い層に集中するため,強度の高い方の層のみ期待した場合+α程度の結果となります。
(追記:元々この文章を作成したのが1999年とかなり昔であるため,現在の基準等とは合致していない可能性があります。)