ここでは2次元FEM解析で,立坑や深礎杭など縦横比の小さい掘削を扱う場合の補正についてまとめてみました。
基本的な考え方は杭の場合と同じです。解析結果に誤差を与える大きな原因としては,以下の理由が考えられます。
(1) 2次元FEMでは,モデルの奥行き方向に実際には存在している掘削範囲の周辺の土の効果をそのままでは考慮できない。
これは,杭基礎の項での(1)と同じことを表現を変えて記述した内容です。単純に解析モデルの掘削範囲の要素を削除すると,溝堀りのように掘削が奥行き方向に連続しているイメージの解析結果を与えるため,一般に変位量が過大となります。
しかし実際にはモデルの奥行き方向の掘削範囲の外に土が存在し,掘削により解放された応力は周辺の土に再分配されます。
これを補正するためには,いわゆる応力解放率を用いる方法が一般的です。つまり,モデルの奥行き方向に存在する周辺の土の支持効果を考慮して,掘削範囲の全ての応力を解放するのではなく,周辺の土の支持効果を差し引いた分だけ解放してやる方法です。
これは,トンネル掘削を2次元解析するとき,切羽による自立の影響を考慮するためによく使われている方法です。(変位合わせのための概念であり,力学な意味はないため嫌う人も居ます。)
水平断面をモデル化して,モデルの4辺を拘束し,適当にx,y方向に同じ初期応力を与えて,円形掘削の変位量と同じになるような溝掘削の応力解放率を求めた試算では,応力解放率=30〜40%という結果となりました。この計算結果の精度は実は良く分かりませんが,いずれにせよかなりの割合を周辺の土が負担してくれていることになります。