地震を測ろう!

山形盆地は,南北に細長い舟底形を示し,山形市北西部〜山辺町にかけての地域が盆地中央部の凹地帯の中心となっており,新旧河成堆積物および湖成堆積物が厚く埋積しています。
  盆地東部は扇状地が発達して礫や砂などからなる扇状地性の堆積物が卓越していますが,中央部は洪積統に属する湖成堆積物からなる粘土層が厚く堆積しており,既往の弾性波調査の結果などから,これらの第四紀層の厚さは最大で350mにも達すると想定されています。

第四系基底深度
山形盆地の第四系基底深度

この図は,都市圏活断層図に山形盆地の第4系基底深度,主な行政機関の所在地,公的な地震計の設置場所および既往ボーリングなどにより確認された基底深度などを加筆したものです。

この図から分かると思うのですが,公的な地震計はどれも盆地外縁部の比較的地盤の良い所に設置されています。このため盆地の中央部に居ると,地震の際に報道される山形市の震度が感覚的に少し小さいように思われます。
  ちなみに盆地中央南部にある無印の小さい青丸が当社の位置ですが,ここで計測すればかなり貴重なデータを得ることができそうに思いませんか?


これがまず地震を自分で計測してみたいと思ったきっかけです。

ただし地震計を購入しようとするとどれもずいぶん高価であり,直接業務に使用する訳でもないのでおいそれとは購入できません。そんなとき数理設計研究所さんからGID-SSSというパソコン接続タイプの地震計が一式で約5万円という価格で販売されていることを知りました。勿論即購入してMy地震計による試験計測を開始・・・。

GID-SSS
計測状況

事務所の2Fフロアでの計測なので単純比較はできませんが,やはり気象庁の計測震度よりも最大で1程度大きな値を示しています。


しかしまだ解決しなければならない問題があります,それはパソコンの時計の狂いです。

一般にパソコンに組み込まれてる水晶発振器の精度は,通常の時計よりも低いためLANやインターネットなどを通じて定期的に補正を行わないと次第に大きな狂いを生じてしまいます。(数秒〜数分/月)

現在かなり古いノートパソコン(Win-2kだったりします・・)をネットに繋いで桜時計というソフトウェアで定期的に補正をかけていますが,恐らく内部のボタン電池が切れているのか,6時間ごとに約0.8秒ずつ補正がかけられています。

このパソコンは他の用途には一切使っていませんが,こんな古いパソコンをネットに繋ぐこと自体セキュリティ的には問題ありますし,またあまり頻繁に補正を掛けるとネットワークやNTPサーバへの負荷になるので,あまり望ましい使い方ではありません。

アレイ計測を行うには時間の精度がきわめて重要になりますが,それ以外の場合でも地震の計測では時計はできるだけ正確な方が望ましいので何とか解決したい問題です。またセキュリティ上,管理上,あるいは施設の通信インフラ上の問題からこのような地震計をLANに繋げない場合も想定されます。


この問題を解決すれば,個人や企業でもそこそこの精度で実用的な地震計測が可能となります。

解決方法を探しまわった結果,電波時計やGPSを利用してパソコンの時計を定期的に補正を行える製品があることに辿り着きました。
  例えば日通システム株式会社の勤次郎JustTimeや勤次郎JustTime・GPS,シーデックス株式会社の電波時計用タイムサーバーなどの製品です。これらを使うとパソコンをネットワークらから切り離して,インターネットやNTPサーバに負荷をかけることなくパソコンの時計を任意の間隔で高い精度で補正することが可能となります。

さらにパソコンをノートパソコンとして,GID-SSSのRS232Cインターフェイスの電源に無停電装置を組み合わせることにより,停電しても2〜3時間程度は測り続けることができるようになるので,本震中の停電で欠測になったりすることなく計測を続けることができるようになります。

この地震計全体の構成は下図ようなイメージとなります。

地震計構成図
地震計の構成図

GID-SSSが約5万円,ノートパソコンにWin7のベーシックな機種を中古で購入すれば約3万円,電波時計受信装置が約2〜3万円,これに適当な無停電装置と機材一式を収めるラックを併せて約2〜4万円とすると,システム一式で12〜15万円程度で必要十分な性能の簡易な地震計測装置が完成します。


地震を測ってどうするの?と聞かれたことがありますが,

地震計で計測される波形には,その位置における基盤面深度や弾性波速度,振動特性など耐震上非常に有用な地盤情報を多く含んでいます。このため,このような地震計を多数設置できればその地域(平野や盆地など)の広域な地盤特性を把握するための貴重なデータを収集することができます。

ここから先は妄想になりますが,このような地震計を地域の小学校や中学校などへ配布すれば,地震波形の収集という目的の他,児童や生徒,地域住民への理科教育や防災教育の道具として活用してもらえるのではないでしょうか。

誰かこんなアイディアに予算や補助金をつけてくれるところないでしょうかね?,とりあえずは電波時計と無停電装置を買ってセンサーを地面に設置して自社計測を近いうちに始めようと考えています。


これを読んで興味を持たれた方,貴方も地震計測を始めてみませんか? 民間の地震計測ネットワークなんていうのも妄想ですよね。

(2013.8.6 加筆修正等しました.)